レッスン9

与える水と糖度の関係


 果実は水分をあまり与えずに栽培すると、甘くなる事が知られている。この「水を切る」栽培方法が広く使われているのが温州みかん。夏場に白いマルチシートを木の下に敷いて、なるべく雨水が土に染み込まないようにする。またボックス栽培や高畝(たかうね)栽培など根が伸びる場所を制限した栽培方法で、水分を制御やり方もある。そうすると甘くておいしいみかんができる。トマトでも水をぎりぎりまで与えないで作る糖度の高いトマトがうけている。しかし、なぜ与える水が少ないと果実があまくなるのだろうか。ちょっと勉強してみよう。



与える水を減らすとなぜ果実は甘くなる?
乾きへの自衛策!
糖を増やして
浸透性を高め
吸水力アップ

 植物に水分を余り与えないで育てる事を、「水分ストレス」を与えるという。一般にいわれているのは、みかんに水分ストレスを与えると、果実の中の水分が減って、糖が濃縮されるということ。果汁の中の糖濃度が高くなるため、当然甘くなるわけだ。もう1つの理由が、植物は環境の変化に応じて、自分の体を一定の状態に調節しようとする機能がある、ということ。
 この機能を「ホメオスタシス」と呼んでいる。水がなくなると植物は死んでしまうから、水を吸おうと努力する。水を吸うには、細胞内に溶けている糖などの物質を増やし、細胞内の液の濃度を高くしてやる。塩の濃い海水につかっていると水分が奪われ指がしわくちゃになるのと同じ「浸透圧」の原理で、植物細胞が水を吸おうとする。ホメオスタシスが働いている細胞内部の成分を変えているわけだ。それで糖などが増えると考えられている。


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 浸透圧を高めるために糖を増やすだけでなく、糖の質も換えている。 みかんではショ糖、ブドウ糖、果糖が主な糖だが、成熟するにしたがって果実の中には普通、ショ糖が蓄積されていく。ところが水分ストレスを与えたみかんは、ブドウ糖や果糖が増えることが分かっている。2つの糖の分子が結びついているショ糖が分解して、1つの糖分子でできているブドウ糖、果糖に変化するわけだ。つまり糖含量は同じでも、2糖類が割れて単糖類になることで、糖の濃度が高まり、浸透性も高くなる仕組みが働いていることになる。この現象も、みかんが糖の組成を変化させることで、水分ストレスに対処したものと考えられる。糖だけでなくプロリンというアミノ酸の一種が増えることも分かっている。これも浸透圧を高めるのに役立っているようだ。しかし、研究者によると、水分ストレスによって果実が甘くなるメカニズムについては、さまざまな要因が絡み合い、まだよく分からない部分も多いという。これまで挙げた理由以外にも@水分ストレスが葉や枝の伸長を抑えるため、糖などの光合成産物が果実に多く分配される。A呼吸が抑えられ、光合成物産の消費が少なくなる-などが考えられている。

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 ところで、小さいみかんの方がおいしい傾向があると言われるが、これも水分ストレスと同じ原理だと考えられる。1本の木にたくさんの実が成ると実が大きくならない。しかも多い果実が限られた水を奪い合うため、個々の果実が少しでも水を多く吸おうとして、同じ現象を引き起こすわけだ。最近のみかん栽培ではこの原理を逆手とって、裏年にたくさん成らせ、表年に全く成らせないことを繰り返す「隔年相互結実法」という栽培法を取り入れる産地もある。 たくさん成らせた年には甘くておいしいみかんができ、同時に、全体としての生産量も安定させようという狙いだ。厳しい環境で育てられると、甘く、親しまれる性質になるのは人間と同じ?

平成14年12月11日 日本農業新聞 なるほどサイエンスを引用

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